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2009 年09 月03 日

大手タクシー業者・国際自動車の許可取消

新聞報道によると、2月9日、労働基準監督署からの通報を受け、国際自動車赤羽営業所に監査を実施し運転者の過労防止違反(拘束時間超過、休息期間不足、乗務距離の最高限度超過)や運転者に対する指導監督違反があり違反点数が44点、これまでの違反点数47点に加算すると合計88点となり、事業許可の取消処分に当たる80点を超えたため、国土交通省関東運輸局は国際自動車の一般乗用旅客自動車運送事業許可を取り消した。

 ところで、タクシー事業は道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業にあたるため、国土交通大臣の許可を要する。許可の取消事由を定めるのは同法40条だ。

第四十条  国土交通大臣は、一般旅客自動車運送事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。
一  この法律若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は許可若しくは認可に付した条件に違反したとき。
二  正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しないとき。
三  第七条第一号、第三号又は第四号に該当することとなつたとき。

 しかし、これを見ても、許可取消の理由は分からない。
 先の新聞報道を見ると、関東運輸局による指導監督違反があったという。国の指導監督の根拠条文はおそらく31条だろう。(続く)

(事業改善の命令)
第三十一条  国土交通大臣は、一般旅客自動車運送事業者の事業について旅客の利便その他公共の福祉を阻害している事実があると認めるときは、一般旅客自動車運送事業者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。
一  事業計画(路線定期運行を行う一般乗合旅客自動車運送事業者にあつては、事業計画又は運行計画)を変更すること。
二  運賃等の上限を変更すること。
三  第九条の三第一項の運賃又は料金を変更すること。
四  運送約款を変更すること。
五  自動車その他の輸送施設を改善すること。
六  旅客の円滑な輸送を確保するための措置を講ずること。
七  旅客の運送に関し支払うことあるべき損害賠償のため保険契約を締結すること。

 しかし、道路運送法を見る限りでは、道路運送法は「道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし、並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより、輸送の安全を確保し、道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに、道路運送の総合的な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする」のだから、運転手の超過勤務・過労防止を求める業務改善命令を発するというのは、法の目的とは合致しないし、「旅客の円滑な輸送を確保するための措置を講ずること」には含まれないように思える。(PSで訂正)

 また、違反点数に達したため許可取消に至ったというのは、法律には「違反点数」というものは定められていないから、おそらく法40条の許可取消についての行政手続法に基づく処分基準として定められているのだろう。違反点数制というのは、運転免許取消や停止基準と同様で客観的基準でよいようにも思える。しかし、運転免許取消に係る違反点数制は道路交通法に「政令で定める基準に従い」という規定があって、道路交通法施行令に違反点数制が定められているのだが、道路運送車両法は全く法律に根拠規定がない。果たして行政庁の定める処分基準というだけでこれが正当化できるのか疑問の余地もある。

PS 北村教授から、運転手の超過勤務・過労防止を求める業務改善命令は、道路運送法27条を根拠とするものだというご指摘をいただいた。なるほど、27条を見ると、

第二十七条  一般旅客自動車運送事業者は、事業計画(路線定期運行を行う一般乗合旅客自動車運送事業者にあつては、事業計画及び運行計画)の遂行に必要となる員数の運転者の確保、事業用自動車の運転者がその休憩又は睡眠のために利用することができる施設の整備、事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他の運行の管理、事業用自動車の運転者、車掌その他旅客又は公衆に接する従業員(次項において「運転者等」という。)の適切な指導監督、事業用自動車内における当該事業者の氏名又は名称の掲示その他の旅客に対する適切な情報の提供その他の輸送の安全及び旅客の利便の確保のために必要な事項として国土交通省令で定めるものを遵守しなければならない。
との定めがあった。

投稿者:ゆかわat 21 :13| ビジネス | コメント(0 )

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